記憶力と英語 − 上達のメカニズム:学習の基本

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   1-1 苦手意識の原因
   1-2 上達のメカニズム
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   3-4 語彙力強化
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1.学習の基本
                1-2 上達のメカニズム

 (5) 記憶力と英語

目の前で、アメリカ人が万年筆を指さし " This is a pen. " と言う場面を想像してみてください。
この英文を聴き取れない人はまずいないと思います。

これは、英文が簡単だからではありません。
" This is a pen. " という表現に耳慣れ、頭にこびりついているからです。
この表現は、小さい頃から慣れ親しみ、友達同士の会話で冗談半分に使うこともあったはずです。

同じような短い簡単な文章であっても、耳慣れていない英語表現を聴き取ることは至難です。

たとえば、"Better get going. " (もういかなくちゃ。) はどうでしょう?
実際の英会話では、とてもよく使う言葉です。
英会話教本などですでに練習した方には難なく聴き取れるでしょう。
ところが、初めて聞く、あるいは、意識してリスニングのトレーニングをしていない人には、まず聴き取ることはできないと思います。

ここで、リスニングのメカニズムを二段階で考えてみたいと思います。
それは「音声」と「理解」です。

まず「音声」について。
この "Better get going. " は、「ベター ゲット ゴーイング」とは発音されません。
「ベラゲッゴーイン」と発音されます(少なくとも、そう聞こえます)。
アクセントは、「ベラ」の部分をもっとも強く、「ゴー」をその次に強く発音します。

一般の人にとって、「英語の修得」と「記憶力の優劣」はまったくといっていいほど関係ないと思います。
これは、「英語をしゃべれる人の記憶力が良く、そうでない人の記憶力が悪い」、ということは無いという意味です。

実際には、英語の習得には記憶力が必要です。
「記憶のしかた」「記憶力の使い方」はとても重要なので、そのメカニズムを理解しておいたほうが良いと思います。

◆多頻出の短い文章(決まり文句)

決まり文句と呼ばれる、多頻出の短い文章は、まる覚えする必要があります。
これは、入門〜初級レベルの方にあてはまることで、当サイトのいたる所で述べています。

たとえば、

@ "You don't have to worry about 〜. "    「〜のことなんか気にすることないよ」
A "Have you been to 〜. "            「〜へ行ったことある?」
B "Mind if I 〜" (例)"Mind if I sit here? "  「〜してもいい?」 
                                 (例)「ここ、座っていいかしら?」
                                      あるいは 「ここ、空いてる?」

ここで言う「まる覚え」は、単に記憶するということではなく、ひとつの文章を何度も、何度も繰り返し聞き、できれば後に続いて発音する特訓をするのです。
覚えるというよりも体に染みつかせると言ったほうが適切かもしれません。

このようなトレーニングによって、短い英語表現を直解できるようになる訳ですが、これは、入門〜初級レベルの方の英語の能力向上にとても有効です。
実際には、トレーニングした英語表現を聴き取れるだけでなく、その表現が含まれる長文や、長い会話を聞き取るための、大きな助けとなるのです。

たとえば、本ページで提示した決まり文句を例にとってみましょう。

"If you heve been to England, you don't have to worry about meeting foreigner."
「もし、イギリスに行ったことがあるなら、外国人に会うことを心配することないじゃないか」

一見、長い文章で、こんな表現をネイティブがナチュラルスピードで話したら、とても聞き取れない、と思ってしまいます。
ところが、上の短い英文をトレーニングしていれば、スムーズに聞き取れるのです。

なぜなら、この文章は、上に提示した短い決まり文句@とAを組み合わせただけだからです。
トレーニングした表現で構成された文でなくても、会話の一部に「直解」できる表現が入っていると、会話の内容を把握でき、予測しながら聞くことができるため、聴き取りやすくなっていきます。

◆少し複雑な表現

日本人にとって、耳慣れていない文章を、母国語と違う語順で表現されるのが、英語です。
たとえば、
「仕事(を終わらせるに)は、3時間かかるよ。」という表現は、英語で、

" It will take three hours to complete my job. "

と言います。

英語では「3時間かかる」が先に来て、「宿題を終わらせる」が後にきます。
リスニングの上級者で、多少の長文でも英語のまま直解できる人は別ですが、外国語として英語を使えるレベルまで修得していく過程では、一つの英語表現を聴いて理解するまで瞬間的な記憶力が必要になります。
これは、リスニングで聴いた英文の前半部分を瞬間的に覚えておき、後半の表現と結合させるための記憶ということになります。

私たちが学校で習った英語の勉強法では、日本語の語順通りに、後ろから英文をたどりながら理解することができましたが、リスニングではそうはいきません。
かならず、聴いたとおりの語順で理解しなければなりません。

例題の英文では、"It will take three hours"「3時間かかる」を記憶しつつ、後半の"to complete my job"「仕事を終わらせる」を聞き取って、意味を完成させなければなりません。
初級レベルのかたで、リスニングの壁に悩んでいる方は、ここで引っかかっている方が多いと思
います。
私もかつては、そうでした。

初級レベルで、リスニングのトレーニングを積んだ人は、音声としては英文全体をインプットできるのですが、どうしても後半の"complete my job"だけが理解として残り、文章全体を理解でません。
リーディングなら、ここで、文の前半にもどって、全体を理解することも可能ですが、リスニングの場合はそうはいきません。

これは、誰でも持っている瞬間記憶を活用するトレーニング方法の問題です。
私たちは、子供の頃から、読解を中心に英語を勉強してきましたから、こうゆう状況ではすぐに英文を後ろから「返り読み」してきました。
むしろ、正しい日本語へ翻訳するため、積極的に「返り読み」をするよう教えられてきたのです。
リスニングにおいても、一度聴いて後半部分だけが聴き取れたら、もう一度聞き返して、今度は前半に集中。
といったリスニングのトレーニングをする人もいます。

トレーニングも目的にもよりますが、残念ながら、このような方法では、リスニング能力の向上は遅々として進まないと思います。
苦しくても、英文を頭から聴いて理解するトレーニングを続けることで、誰もがもっている、瞬間記憶力を活用できるようにな、語順の違う英語を「直解」できるようになっていきます。

学習方法については、当サイトの「学習方法」で詳述します。
ここでは、リスニング能力向上のメカニズムをしっかりと理解していただければ幸いです。

  


1-2 上達のメカニズム
(1) 音声スピード(入門レベル) / (2) 音声スピード(初級) / (3) 音声スピード(中・上級)
(4) 耳慣れた表現 / (5) 記憶力と英語 / (6) 右脳の活用 / (7) 発声練習
(8) 推測しながら聞く / (9) 英文法は必要か?



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